復興の灯火プロジェクト

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和紙の小話

復活の和紙

2021.01.03

海老根伝統手漉き和紙は、郡山市中田町の海老根地区に350年以上前から伝わる伝統的な和紙です。江戸時代末期から明治時代にかけての最盛期には地区全戸の80戸で紙漉きが行われていました。
地域の産業として根付いていた和紙づくりでしたが,パルプ紙やビニールに押されて需要が減り、1988年には最後の1戸も廃業して手漉き和紙は一度途絶えました。

 

しかし、10年後の1998年、中田町郷土史会の方や地元の公民館長だった方が、
「紙漉き道具や紙漉きの技術者がいなくなる前に、後世に伝えたい」
との思いから、海老根和紙の復活を目指す保存会を立ち上げました。20人の会員の半分は、かつて和紙作りの経験がある人たちでした。紙を漉いたことのある人が丈夫なうちに和紙を復活させたいという思いがあったのです。
保存会を発足してからは、昔和紙を作っていた家の倉庫に眠っていた道具を集め、上川崎和紙で有名な安達町(現在の二本松市)に何度も足を運び研修を受けたり、原料となるコウゾの苗やトロロアオイの種を提供してもらいました。
そうして、1998年12月に復活後初となる和紙が完成しました。
自分たちに受け継がれた海老根和紙を後世に残したいという思いを持った多くのメンバーが関わり、他の地域から技術を学びながらも海老根の製法をきちんと受け継いでみんなで完成させた和紙。
当時の広報紙に、保存会の会長を務めていた熊田正男さんの喜びの声がこう記されていました。
「久々に和紙を漉いてみて、年齢的なものもあり、若かったころの作業量には遠く及ばなかったと同時に、改めて重労働だと感じました。しかし、「簾(す)」から和紙を取り出した時のみんなの喜びの顔は、何と表現してよいかわからないほど心に残りました。」
こうして海老根伝統手漉き和紙は復活を遂げたのです。
その時、熊田会長はこんな抱負も述べていました。
「まず、地元の小学校の卒業証書をつくってあげたい。そして中田地区の全学校にも広げたい。」
海老根伝統手漉き和紙復活へ向けた活動で生まれた地域の和も大切に引き継いでいきたいという熊田会長の想いは現在も保存会に受け継がれています。

私たちが連携して取り組んでいます